傷跡修正・ケロイド

傷跡というのは、メスを用いたり、ケガをしたり、皮膚の真皮まで損傷を受けた場合には必ず発生するものです(肌の構造参照)。完全に消すことはできません。程度の差はあれ、残るものです。

しかし、形成外科の技術を用いて傷跡(瘢痕)を切り取り、再度丁寧に縫合すれば目立たなくことも多いものです。もちろんこれでも細い線状には残ります。魔法のように消えることはないのです。よく私の所に来る方でレーザーで傷跡を消してくださいと言う人がいますが、無理です。目立たなくしましょうということになりますし、もう1ミリの幅しかないような傷跡・瘢痕だと如何ともしがたいのです。せいぜいクリスタルピーリングやダイヤモンドピーリングを実施して目立たなくするのが限界です。

一方、ケロイド・肥厚性瘢痕と言われる、盛り上がった赤みがあるような傷跡(ケガをしなくても生じます)は、メスで切り取ってきれいに縫っても再発する・もしくは悪化することもあります(赤みの少ない肥厚性瘢痕は適応を選べば手術で綺麗にすることも出来ます)。これをどのように治していくか、学会でも色々と報告されています。
ステロイドの注射(ケナコルトA)、ステロイドのテープ(ドレニゾンテープ)、シリコンシートやジェル、飲み薬(リザベン)、圧迫療法、低出力レーザー、色素レーザー(ダイレーザー)、YAGレーザー、くりぬき手術など様々なものがありますが、全てケロイドを治すのではなく、改善するものです。


ケロイドの発生原因はまだ確実には分かっていません。オーバーヒーリングと言う表現が海外では見られます。つまり、本来傷が治る時には、ある程度傷跡が安定してきて、コラーゲンの生産が落ち着くと、炎症機転が収まり、コラーゲンの置換が起こります(傷を治す時のコラーゲンと正常時のコラーゲンは異なります)。ここが上手くいかず、いつまでも傷が治らないと体が判断し、コラーゲンや幼弱なムコ多糖類(真皮内の物質)を大量に生産している状態を示します。この原因は血管の中から放出される成分によるか、線維芽細胞(真皮のコラーゲンなどを生産している細胞)の活動性が収まらないか、表皮の亀裂によるものか、酸素濃度など環境の異常、その他各種のサイトカイン(細胞間を関連させて色々な動きをコントロールする因子、ホルモンのようなもの)の異常、ヘルニア現象(弱くてもろい部分へコラーゲンがどんどん拡がっていく)など色々と報告されていますが、まだ分かっていません。私も論文としてケロイドの線維芽細胞の活性が高まっているという論文を書いたこともありますし、酸素濃度による線維芽細胞の分裂能の変化についての論文を書いたこともあります。また学会発表で表皮細胞の活性について検討したこともあります。しかし、全ての理由付けをすることはできませんでした。

その他、よく知られる原因として傷跡を引っ張る張力が持続し、いつまでも傷が安定しないこともあります。これは肘や膝の傷跡が汚くなりやすいと考えていただければ分かりやすいでしょう。
コラーゲンは生体の接着剤みたいなものです。引っ張られ続けると大量にコラーゲンが生じて、コラーゲンの量の増加つまりは傷跡の幅・盛り上がりとなっていきます。

さて、ケロイドの治療に関して、私自身は最近新しいレーザーを用いて、割に良い結果を得らるようになりました。ひどいものはやはり何でも難しいのですが、ある程度のものなら改善します。ステロイドの注射と2種類のレーザー(スムースビーム・ダイレーザー)を用います。注射だけだと盛り上がりなどが縮みはしますが、色が落ち着かなかったり、硬さが取れなかったり、長期的に持続しないということが問題となります。レーザーを組み合わせると、比較的持続効果があり、また軟らかくなります。胸の中央部のケロイドには非常に有効率が高いと感じています。

ケロイドの原因は分かりませんが、この組み合わせというのは線維芽細胞というコラーゲンを発生させる細胞の動きを抑えつつ、コラーゲンを破壊していくこと、血管を潰して放出される刺激物質(サイトカイン)を抑えることなどで効果を出しているのではと思っています。

それ以外に色は赤くなくても非常に盛り上がっているものの場合は最初に炭酸ガスレーザーというもので削って、傷が乾いたらすぐに上記の治療を行うと、盛り上がりも少なくなっていきます。肘のひどい傷跡などは縫い縮めてもすぐに傷跡が汚くなります。この方法がベターかなと考えています。

しかしながら完全に治すことができないことが、どうしても残念です。

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