レーザーなど治療機器の解説

レーザーとは一体何か、皆さんは知っているようで知らないと思います。このページではレーザーを中心として各種機器の理論などを説明します。私は理論好きゆえ、ちょっと専門的に脱線することもありますので、あまり専門的なところは茶色で小さく書くようにします。興味があったらお読み下さい。

レーザーの理論

レーザーとは光を特殊な状態にして発振するものです(レーダーではありません)。あくまで光の一種です。皆さんは夜のショーでレーザー光線というものを見たことがありますよね。ある色の光が真っ直ぐに延々と続いています。また家庭ではレーザーディスクなどもあります。光ディスクというものは光でディスクの情報を読みとるのです。光はその波長によって吸収されやすいものや透過してしまうものなどがあり、この性質を応用して色々なものを破壊したりします。しかし、例えば蛍光灯から出ている光にはレーザーは含まれません。レーザーとは単に光ではなく、ある波長(色)を出すもので、色んな色は混ざりません。またレーザー発振というのは自然に放出された光と異なります。

原理は、ある条件下に物質の原子にエネルギーを与え励起状態というものを作り出します(電子が高いエネルギー準位に移動)。これは正常な物質の状態ではないために安定した状態に物質は戻ろうとします(熱平衡状態)。複数の原子の増加したエネルギーが戻る時に光が放出されます(普通の光はこれです)が、ある一定条件を満たした光などのエネルギーをここで物質に与えると、ある種の光が放出されます。この光は誘導放出といって各原子間から生じた光放出で、それぞれが同じ位相、振幅数になり、一定方向の光として生じます。しかしそれでは力は弱く、反転分布といって、物質を高いエネルギー状態の原子が大量にある特殊な状態にして光を通すことで、どんどん増幅させることができるのです。無限に物質が長ければ良いのですが、そうはいかないので、物質の両端に反射鏡を置き、何度も光が往復すること(光共振)で、強い増幅が得られ、レーザー発振となります。つまり単色で同じ方向性を持った光なのです。また、このような同じ性質の光(光子)の集まりゆえ、干渉性といって、数学で習ったsin,cosin,tanのように正弦波という状態に光はなっています。この干渉性から正確な計測機器にレーザーは用いられます。干渉性をコヒーレントといいますが、以前コヒーレント社(現在合併してルミナス社)というレーザー製造会社があったくらいです。またこの状態ゆえに波長幅が短く、単一の色という特色もあります。この部分が最大限に活用されるのが医療用レーザーです。また指向性と言って、ずっと真っ直ぐに進みます。ものに反射させて位置や距離をつかんだりすることができます。ミサイルのレーザーによる追尾などは良い例です。

これで分かりましたか?レーザーは真っ直ぐに進み、ある単一の色の光の束です。パワーもあります。

さて、メラニンや血管(ヘモグロビン)、水、コラーゲンなどには色による吸収差があります。ある一つの波長に吸収されやすいということではありませんが、Aという色に吸収されやすく、B色に吸収されにくいレーザーがあれば、AとBを混ぜた物質にレーザーを当て、破壊すると、Bだけ色が残るということが可能です。選択性破壊です。これにより目的とするアザやシミなどを狙って壊すことができるのです。

詳細には、皮膚のレーザーに反応する3大要素、水、メラニン、血管で考えてみましょう。血管内のヘモグロビンは600nmあたりの波長まで非常に吸収しますが、それより長い波長は殆ど吸収しません。水は1200nm辺りまで殆ど吸収されず、それより長い波長は非常によく吸収します。メラニンは波長が長いほど吸収率は落ちます。よって、ヘモグロビンを壊したいなら600nmまでの波長、メラニンなら600〜1200nmの波長です。これで選択的に色を壊せます。しかし、もう一つ、水に吸収される波長までは波長が長いほど深くまで届くという特性もあります。あまり浅いレベルまでしか届かないと目的とするものを破壊できません。例えば赤あざの場合は600nmに近いものの方がいいのです。また、吸収率は色々な波長にピークがあって、必ずしも波長が短い方がヘモグロビンの吸収がよいわけではありません。よって、585nmのダイレーザーが今は選択されています。メラニン(脱毛含む)の場合は694nmのルビー、755nmのアレキサンドライト、1064nmのNd:YAGが代表的なものですが、メラニンは波長が長いと徐々に吸収率は下がるが深くまで届くようになるという特徴から、これらレーザーもそれぞれにメリットがあるのです。

上記以外にレーザーの理論で重要なのは、熱緩和時間という理論です。これはレーザーの光が物質に吸収されると、その物質は一気に熱膨張し破壊されます。しかし、個々で生じた熱は周囲に拡がっていきます。周りが加熱されていくのです。よって、壊したくない部分がやけどを起こしてしまいます。脱毛の場合は毛の周囲の毛母細胞、ステムセルを壊すことが目的ゆえ多少時間が長い方がよいのですが、シミやアザの場合は困ります。ここで物質固有の熱がその物質内だけで留まり、周りまで拡がらない時間以内にレーザー照射が終了する必要があります。これが熱緩和時間です。

メラニン顆粒の熱緩和時間は50ns(ナノ秒)ほどであり、これより短い時間だと、メラニン内だけで熱は留まります。熱平衡という理論で、周囲の熱と生じた熱の広がりが平衡状態に達することです。冷たい水に熱いお湯を一滴入れたら、どれくらいの時間で温度差がなくなるかと同じです。よって今はメラニンに対してQスイッチレーザーという照射時間が10〜100nsのものを用います。しかし、入れ墨の場合は色素がメラニンより長い熱緩和時間を持つため、これより若干長い熱緩和時間がないと熱作用が逆に弱くなります。このあたりが微妙なところで、Qスイッチアレキサンドライトレーザーは50nsと上手いところをついています。最近はロングパルスレーザーの方がシミには有効という医師もいますが、レーザーをよく知る医師は否定します。ロングパルスというのはms単位の長い照射時間ですから、熱が生じます。ただ、Qスイッチレーザーの欠点は衝撃が強いことです。ns単位ですとレーザーの照射された衝撃が強く、皮膚表面が剥がれてしまうこともあります。これはQスイッチレーザーとロングパルスレーザーのかさぶたのでき方の差につながっているのでしょう。

理論のみですが、お分かりになりましたか?レーザーの謎が解けましたか?


一方フラッシュランプと言われるIPLやフォトフェイシャルはレーザーと異なります。カメラのフラッシュのようなものです。フィルターがあって、有害で不要な波長をカットしてほしい波長の部分だけ取り出します。もちろん幅が広く510nm〜1200nmなど、非常に幅広いのが特徴です。つまり色々なものに効きやすいということになります。しかしレーザーのような指向性・干渉性のある光ではありませんし、照射時間も非常に長くピークパワーといわれる壊す力も弱いのです。かさぶたを作らず緩やかな改善というものとお考え下さい。最近ではロングパルスアレキサンドライトレーザーと皮膚保護により同様の効果を得ようとする試みが多数なされていますが、レーザーは単一の光ゆえ、メラニンが中心となりますから、赤みだと難しいでしょう。しかし逆にはメラニン系のものやツヤなど皮膚表面の熱作用で構わないものは有効と考えます。

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